親になった息子

 

 

孫の男の子がもうすぐ3歳になるころのことでした。

 

父親である私のの息子は 仕事から帰ると、

孫を車に乗せて、ドライブするのが

日課でした。

 

 孫は車が大好きで、いつも大喜び。

息子の帰宅時間を午後6時と教えたので、

夕方になると小さな置時計を持ち、

帰りを心待ちにしていたそうです。

 

 その習慣は転勤でなくなりました。

仕事も内勤から外勤となり、

6時に帰宅とはいきません。

それでも孫は時計を持ち、6時を待ちます。

 

 お母さんは我が子の気持ちを考えると

忍びなかったそうです。

 苦肉の策として、気づかれないよう時計の針を

戻したりしました。

そして待疲れて寝る毎日になりました。

 

 ある日の夜中、11時過ぎ。

目を覚ました孫は、お父さんを見つけ、

それまでの思いが 爆発したのでしょう。

全身で大喜びして飛びつき

「お父さん、ドライブに行こう!」。

 

 仕事の内容が変わり、心身ともに疲れて

いたのでしょうが、

息子は「よし行くか!」と

車で出かけました。

 

子の思いに応えてあげていない、

という親の思い。

暗い道を走り続け

「もう帰るか?」と聞くと孫は「まだ」。

「わかった」と走り続けました。

 

わが子の気持ちをちゃんと受け止めた

息子の行動を、

後日、お母さんから聞き、

私は胸がいっぱいになりました。

 

その時の孫は この春から高校生です。

息子も髪に白いものが混じっています。

 

 2014年4月15日

北海道新聞 「生活」  いずみ 欄     沢岡 政江 (73歳 主婦) 留萌管内羽幌町